説教『嵐の中の人生航路』(マルコ4:35~41)

2017年7月23日                  主日礼拝説教  
説教『嵐の中の人生航路』(マルコ4:35~41)

◎先週、梅雨も明け猛暑が続いていましたが、今日は暑さが和らぎました。先週、多くのニュースが報じられる中で、大きな感慨をもって受け止めたのは、105歳まで現役の医師として働かれた日野原重明先生のご召天のニュースです。最期まで前向きに活き活きと隣人のために生きられた生き方を通して、老年期をどう生きるかの模範を示されましたが、その根底にはキリスト教の信仰があったことを思います。信仰によって常に神様の新しい命と力、愛と恵み、祝福と希望を受けておられた。信仰者の模範も示されました。

◎さて、今日も聖書のみ言葉を通して神様の命を受けて参ります。今日取り上げる聖書はマルコ4:35~41の「突風を静める奇跡物語」です。この後続く奇跡物語の最初の奇跡ですが、この物語は初代教会の人々を初め、教会の人々に愛されてきた物語です。短い物語ですが、実に多くの豊かなメッセージが込められ、人々はここから多くの教訓、勇気と力、希望を与えられてきた。特に信仰とは何かを学んできたのでした。

◎そのメッセージとは何か。その前にどういう話かを見ていきましょう。時は「その日の夕方」です。「その日」とは、4:1にあるように、主イエスがガリラヤ湖上の舟から湖岸の群衆に向かって神の国についてたとえ話をされていた、その日です。主は教えを終えた後、弟子達に向かって「向こう岸へ渡ろう」と言われます。弟子達はイエス様を舟に乗せて漕ぎ出します。ガリラヤ湖は南北に約20キロ、東西に約12キロの大きな湖です。夜になると激しい突風が吹き出しました。ガリラヤ湖は地形上、夕方から夜にかけて突風が吹きました。激しい嵐に遭い、舟は大きく揺れ、水が舟の中に入ってきます。沈没することを恐れて弟子達は慌てます。ところが、イエス様は船尾の方で枕して眠っておられる。弟子達は主を非難するかのように「先生、私達が溺れても構わないのですか」と叫びます。すると、主は起き出し、風を叱り、湖に「黙れ!沈まれ!」と命じられました。すると、風は止み、波も静まります。そして、「なぜ、怖がるのか、まだ信じないのか」と弟子達をお叱りになった。弟子達は非常に恐れて「一体、この方はどなたなのだろう。風や湖も静まるではないか」と互いに言った。これが「突風を静めた奇跡物語」の内容です。

◎この物語の中にはいくつかのメッセージが込められていますが、今日は、4つのメッセージをお伝えします。まず第一のメッセージは、信仰者の人生とは主イエスが招く舟に乗って主と共に海を渡っていく航海のようなものだということです。4:35には、主が弟子達に「向こう岸に渡ろう」と呼びかけ、弟子達が舟をこぎ出したとあります。その舟が向かう目標は主が立てた目標です。私の目標ではなく、主の目標に向かって主が招く舟に乗って主と共に進んで行く。これは主に従う信仰者の人生を象徴していると言えます。さらにこの舟は教会を象徴します。主が主導し、主の目指す目標に向かって主と共に進んで行くのが教会です。古来、教会は船にたとえられてきました。昔、カトリックの鹿児島カテドラル・ザビエル教会を訪ねた時、会堂全体が航海する船として造られていました。私という舟、夫婦という舟、家族という舟、教会という船、会社や国、地球という船、これらは主が主導し、主が共におられ、主と共に進んで行きます。それが私達の人生・夫婦・家族・会社・国・世界・地球であることを今日の記事は伝えていると言えます。

 

◎第二のメッセージは、その舟は激しい突風によって大きく揺れ、大波に翻弄され、水浸しとなり、今にも沈まんばかりの危機に直面したように、私達の人生・夫婦・家族・教会・会社・国・地球が大きな危機に直面することがあると言うことです。それは主が共におられてもそうです。いや、主が共におられるからこそ危機に直面することもあります。この嵐は初代教会を襲った迫害を表していると言う学者もいます。しかし、私達は忘れてはなりません。主が共におられること、そして、主が必ず嵐を静め、目的地に無事に連れて行ってくださることを。いかなる危機も主が乗り越えさせてくださることを忘れてはなりません。

 

◎第三のメッセージは、主はいかなる方かということです。ここで主は二つの姿を見せます。一つは嵐の舟の中で眠っておられる姿です。その姿は父なる神を絶対的に信頼する信仰を表しています。神様は与えられた使命を果たすまで滅ぼすことはない。そればかりか、神様は今、ここにおられ、ここで生きて働いておられる。そのような神への絶対的な信頼と安心があったことを示しています。もう一つの姿は、風と波を叱り、静めた、自然を治める方としての主です。これは天地創造の神、光あれと言って光があったという記事に示された神の姿を示しています。つまり、天地を治める神としての顔がここに示されています。その姿に弟子達は驚愕します。この記事には、父なる神に信頼する主、天地を治める神が示されています。

 

◎第四のメッセージは、信仰とはそのような主を絶対的に信頼し、信じることだと言うことです。主は私達の舟に共に乗り、嵐を治め、必ず目的地まで連れて行ってくれる方です。その信仰を心に刻みましょう。