説教『愛と命、希望と力を与える神の聖なる霊』(使徒2:14~36)

◎5月も半ばとなりましたが、先週は初夏の日差しが強く感じられる1週間でした。そのような中、今日は、聖霊降臨日・ペンテコステを迎えました。ペンテコステとは50日目を意味しますが、過越祭の最中に起こった十字架と復活の出来事から50日目、イエス様が復活され40日間、使徒たちと生活を共にされた後、昇天されてから10日目に聖霊が降った日です。今日はこの日を覚えて聖霊の意味と働きを心に深く刻んで参りたいと思います。
◎今日、取り上げる聖書の箇所は、使徒言行録2:14~36のペテロの説教です。聖霊が降ることはイエス様が復活後、また昇天前に予告しておられたことです。その約束通り聖霊が使徒達を初め120人の人々に降ります。使徒2:1以下によると、大音響と共に聖霊が降り、炎のような舌が一人一人の上にとどまると、一同は聖霊に満たされて世界各地の言葉で語り始めたと言います。福音の世界宣教を予表する出来事が起こったのでした。その後、11人の使徒達と共に立ち上がって話し始めたのがペテロです。この最初の説教から聖霊降臨の意味を探ります。

◎まず、ペトロは何を語ったのでしょうか。それは第一に、この聖霊降臨が「預言の成就」であるということです。
ペトロは、預言の書・ヨエル書の3章の言葉「終わりの時に、わたしの霊をすべての人に注ぐ。するとあなたの息子と娘は預言し、若者は幻を見、老人は夢を見る。…」を引用し、預言・約束の成就であることを語ります。第二に語ったのは、主イエスのことです。主が十字架に架かって殺されたこと、神がその主を復活させたこと、そして自分達はその証人であることを証言し、聖霊降臨はその主が約束し、今日起こったことを語り、「十字架に架かったイエスこそ救い主である」と力強く証言したのでした。このペトロの力強い証言に多くの人々は心を打たれ、「悔い改めて主イエスの名によって洗礼を受け、罪を赦していただきなさい。すると、神の賜物として聖霊がすべての人に与えられる」とのペトロの勧めに従い、3000人が洗礼を受けるという奇跡が起こります。このように聖霊降臨によって使徒達による福音宣教が始まり、多くの人が受洗し、教会が誕生したのでした。
◎このペテロの説教を通して聖霊降臨の意味が伝わってきます。それは、第一に、聖霊降臨とは預言・約束されていたことが実現した出来事だということです。聖霊降臨は先程のヨエル書の以外の預言書にも約束されています。例えば、エゼキエル書には「私は彼らの中に新しい霊を授ける。私は彼らの心から石の心を取り除き、肉の心を与える。彼らは私の民となり、私は彼らの神となる」(11:9)「(枯れた骨に向かって)主なる神はこう言われる。私はお前達の中に霊を吹き込む。するとお前達は生き返る」(37:5)と預言されています。また、主イエスご自身も「私は父が約束されたものをあなた方に送る」(ルカ24:49)と約束されています。聖霊降臨とは、この「新しい霊を注ぎ、新たな命に生き返らせる」という旧約の預言、主の約束が実現した出来事なのです。

◎第二に、このペトロの説教は聖霊の意味と働きを示している出来事と言えます。聖霊の働きとはいかなるものか。
それは4つあります。一つは、聖霊は私達に神の命と力を与えるものだということです。それは、このペトロの力強い説教に溢れています。ここには主を裏切ったペテロの姿、十字架後に家に鍵をかけて閉じこもっていたペテロの姿、失望と絶望を抱えて故郷に帰ったペトロの姿はありません。ここでペトロは十字架と復活の主を宣べ伝えていますが、これは命を懸けた証言です。命を懸けて証言する使徒ペトロを変えたのは、復活の主イエスと聖霊です。聖霊とは、新しく生まれ変わらせる神の霊・キリストの霊です。私達をキリストにかたどって新たに創造する神の霊であり、私の内に生きて働いている内在するキリストです。この聖霊が命と力を与えるのです。

◎聖霊の二つ目の働きは、イエス・キリストを証言させるという働きです。ヨハネ福音書14章・16章には「父は別に弁護者(助け主)を遣わして永遠にあなた方と一緒にいるようにしてくださる。この方は真理の霊である」とあります。聖霊は真理の霊であり、何が真実で真理か、何が神のみ心かを教え、さらに真理である主イエスを教え、証言させます。使徒言行録でも「ナザレの人、イエス・キリストのほか、誰によっても救いは得られません」(4:12)とペトロに証言させています。その他、パウロを初め使徒達に聖霊が降り、聖霊の力と導きによって使徒達は迫害と弾圧の中、いえす・キリストを証言させています。主を力強く証言させるのが聖霊なのです。◎聖霊の3つ目の働きは、愛と希望を与えるという働きです。「聖霊によって神の愛が私達の心に注がれている」(ローマ5:5)とあるように、聖霊が注ぐ神の愛によって私達は、神と強く結ばれ、隣人愛が広がっていきます。それは「相互の交わりに熱心であった」(使徒2:42)や「聖霊の実は、愛・喜び・平和…」(ガラテヤ5:22)などに表されています。そして、この神の愛が希望を生み出します。聖霊は、達の愛と希望の源泉なのです。

◎聖霊の4つ目の働きは私達の人生と信仰を導くということです。聖霊は神の霊・キリストの霊として私達の人生を導き、信仰を深めてくれます。だから、私達はその聖霊の導きにすべてを委ねることができます。そのような聖霊は神の恵みの賜物と言えます。聖霊に導かれ困難の多い人生を愛と希望をもって力強く歩んでいけるのです。