説教『クリスマスが告げる世界の救いと平和』(ルカ2:8~14)

2015年12月20日     クリスマス礼拝・説教要約
説教『クリスマスが告げる世界の救いと平和』(ルカ2:8~14)

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◎今日、私達は、私達の救い主・イエス様の誕生を祝って礼拝を捧げようとしています。待降節の日々、私達は、救い主の到来を待ち望んできましたが、今日、その日を迎えることができたことを共に喜びたいと思います。先ほど、4人の姉妹の転入会式を行い、私達の教会にお迎えしましたが、そのことも共に喜びたいと思います。

◎今日、私達は主イエスの御降誕を記念して、聖書の御言葉を通して、その御降誕の意味を改めて心に刻みたいと思います。さて、クリスマスと言えば、明るく豊かで華やかでロマンチックなお祭りと思いがちですが、聖書によると、イエス様がお生まれになった時の光景は、それとはまったく対照的に、実に暗く、冷たく、貧しく、闇が広がった光景でした。イエス様は、マリアとヨセフと言う貧しい夫婦、婚約中に身ごもったために周囲に冷たく、蔑まれた夫婦の下に、暗い闇の中、冷たく・貧しく・臭いの立ち込めた家畜小屋でひっそりと誕生されたのでした。そして、その誕生のニュースは、夜通し羊の群れの番をしていた貧しく、蔑まれた羊飼い達に知らされたのでした。そのように、イエス様がお生まれになった時の光景は実に暗く、冷たく、貧しい光景だったのです。

◎しかし、その主イエスの誕生は神様の御計画であり、天にいる者達だけが知る、実に喜びに満ちた出来事でした。 天においては、地上の風景とは異なり、明るく輝く光が満ち溢れ、大きな喜びの声が響いていたのです。ですか ら、天使達はその救い主誕生のニュースをこう告げます。「恐れるな。私は民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町であなたがたのために救い主がお生まれになった」と。そして、さらに、この天使に天の大軍が加わり、神を讃美してこう歌ったと言います。「いと高き所には、栄光、神にあれ。地には平和、御心に適う人にあれ」と。原文には「あれ」という動詞はありません。「あり」とも訳せます。また「御心に適う」は、「人」ではなく、全文に係ると考えればこうなります。「いと高き所には栄光、神にあり。地においては平和、人にあり。これは神の御心である」と。「御心」は「善意・喜び・愛顧」とも訳せますから、主イエスの誕生によって「栄光は神に、平和は人に」授けられることは神の善意・愛顧・喜びであるのだと受け止めることができます。そのように、主イエスの誕生は新しい世界・時代の到来を告げる出来事であり、メッセージだったのです。◎では、この主イエスがこの世界にもたらす救いと平和とは、一体、どのようなものなのでしょうか。救いとは、神に背いて自己中心的に生きている私達の罪からの救いであり、罪の結果としての滅びからの救いであり、また、神の怒りからの救いと言えます。平和とは、まず、罪の赦しによる神との和解・平和です。その神との平和の上に、私自身の内部の平和が生まれ、人と人との間の平和が築かれます。「キリストは私達の平和です。二つのものを一つにし、ご自分の肉において敵意と言う隔ての壁を取り壊されました。キリストは双方をご自分において一人の新しい人に造り上げて平和を実現し、十字架を通して両者を一つの体として神と和解させ十字架によって敵意を滅ぼされました」(エフェソ2章)とある通りです。主イエスは苦しみと悲しみの中にあった人々と共に生き、最後は私達の罪を担って十字架に架かり、三日目に復活されて罪と死に勝利し、私達に救いと平和をもたらしてくださいました。「今日、あなた方のために救い主がお生まれになりました」という天使のお告げと「地においては人の平和あり」との讃美は、その後のイエス様の救い主としての生涯を先取りしていると言えます。私達は、主イエスによって救いと平和がこの地上・この世界において実現したことを知り、また信じるのです。

◎しかし、この世界の現実はどうでしょうか。私達が生きている世界には、いまだなお争い・戦いがあり、互いに奪い合い、殺し合う姿があります。特に今年は世界各地でテロが起こり、多くの人が犠牲になりました。シリアでは空爆が続き、多くの人が難民となって故国を逃れています。国内でも国民多数の反対の中、安保法案が強行採決されました。この国・世界はどうなるのか、不安と恐れが満ちており、絶望的な思いに駆られる人もいます。そういう現実を前にして、主イエス誕生の出来事は何を意味するのでしょうか。私達は、そのような世界にこそ、主イエスが来てくださり、救いと平和をもたらしてくださったことを自らの体験として知らされた者です。主イエスのよる救いと平和は何よりも私達自身の内にあります。その体験から、この主イエスによる救いと平和が、この世界に実現したことを知るのです。今年の4月に長崎で行われた「和解と平和のために祈る国際シンポジウム」において、ルカ神父は日本のキリスタンが戦国時代、「赦し」と「和解」を強調したことを語られました。仇討ちや弔い合戦が当たり前の時代に、「仇討ちはするな」と教えたのです。それは、彼らの中にイエス・キリストによる赦しと和解があったからです。キリシタンは抵抗せずに黙って捕えられ、喜んで処刑されていきました。その「赦し」と「非暴力」の姿に多くの人がキリストを信じたと言います。私達を取り巻く現実は厳しいものがありますが、しかし、私達は、天使達が告げてくれた、もう一つの現実があることを忘れてはなりません。主イエスによって救いと平和がもたらされた。私達はこの救いの土台の上に地上の平和を作り出していくのです。