説教『共に生きる平和な世界』(イザヤ11:6~9)

◎今日は、8月7日、8月最初の日曜日です。昨日は8月6日、オリンピックがにぎやかに始まりましたが、日本 では、今から71年前に広島に原爆が落とされた日でした。たった一発の原子爆弾によって10万人以上の人達が 苦しみながら死んでいきました。8月9日には長崎に原爆が落とされ、8万人以上の人が亡くなり、8月15日に 日本の戦争が終わりました。8月は、戦争が終わった月であり、戦争を二度と起こさないように、また、平和を 築いていけますようにと祈り、決意する月です。今日は、平和聖日。平和について考え、また、祈りましょう。

◎今日、お話するのは、フランシスコという人の話です。ここに一枚の絵を持ってきました。最近、出された藤代 清治さんが書かれた絵本からの絵ですが、この人がフランシスコです。この人は、先ほど一緒に祈った「平和の 祈り」を作ったと言われています。今日は、フランシスコの生き方を通して平和について考えていきましょう。

◎フランシスコは、今から900年以上前、1182年にイタリアのアッシジという町に生まれました。お父さんは、商人をしていて、お金持ちでした。ですからフランシスコは、生まれた時から恵まれた生活の中で成長していきました。その頃、イタリアは戦争が続いていました。町と町が闘い、町の中では貴族と市民が闘い、国の中でも王様と宗教者、貴族が争っていました。若者になったフランシスコは「自分も騎士になって手柄を立てたい」と 思い、騎士になりました。ところが、フランシスコは、騎士になって戦場に向かう途中、高い熱が出て倒れてしまいます。重い熱病に罹り、起き上がることができません。ベッドの中で苦しんでいた時に、彼は不思議な声を聞きました。「フランシスコ、家に帰りなさい。そこでお前が何をなすべきか教えよう」と。それは神様の声でした。フランシスコは、その神様の声を聞いて、家に帰りました。家に帰ると、彼は昔の遊び仲間に加えられ、遊び暮らすようになります。でも、フランシスコの心は満たされません。彼は、何をなすべきか分かりません。

◎そんな時、寂しい野原を歩いていると、みすぼらしい、壊れかけた小さな教会がありました。教会の正面には十字架につけられたイエス様の像が掲げられています。フランシスコはそのイエス様の像の前で祈りました。すると、不思議な声が聴こえました。「さあ、立って、この倒れかけた教会を建て直すのだ」と。それは神様の 声でした。フランシスコは、その声に従って、倒れかけた教会を建て直し始めました。自分の服や持ち物を売り 払い、そのお金で教会を修理しました。そのようにして彼は、神様のために懸命にひたすら教会を修理しました。

◎フランシスコは祈りの人でもありました。昼間は神様と人々のために働き、夜は一生懸命に神様に祈りました。 彼は「ああ神様!わたしのすべて!」とひたすら祈りました。また、彼は、重い病気の人のお世話をしました。 誰もが嫌がる、重い皮膚病の人を、いい香りのする薬草を入れたお風呂に入れ、その身体を丁寧に洗いました。 すると、彼の身体はきれいに治ったといいます。そのようにして彼は重い病気の人のお世話を懸命にしました。フランシスコは、イエス様にならって貧しく過ごし、清く正しく愛をもって生きようとしました。たとえ貧しくとも清く正しく愛を持って生きていこうと教えるフランシスコの周りには一人二人と弟子が増えていきました。彼は弟子達を「小さな兄弟」と呼び、愛をもって人を助け、人に喜びを与える共同生活を共に築いていきました。

◎彼は人間だけでなく、森や川、草や花、鳥や魚、虫や動物、すべての自然を愛しました。ある町に人食いオオカミがいて、町の人達から恐れられていました。フランシスコは「きっと一人ぼっちで、食べる物がないのだろう」と思い、森の奥に出かけて行きました。狼が現れた時、弟子達は逃げていきましたが、フランシスコは狼に手を差し伸べて言いました。「もう人を襲わないでくれ。食べ物を与えるように町の人に行っておくよ」、そう言うと狼は優しくなり、その前足をフランシスコの手のひらに載せました。それ以降、狼は襲わなくなりました。

◎また、ある時、道ばたの木にたくさんの鳥達がとまっていました。フランシスコはその鳥達に呼びかけました。「小鳥達よ、造り主なる神様は食べる物も飲む水もすべて用意してくださっています。神様に感謝し、神様を讃えましょう」と。すると、小鳥たちは首をのばし、うやうやしく地面に頭をたれておじぎしました。そして、空高く飛んでいき、空の上に東西南北に十字架の形を描いたと言います。小鳥も狼の友達・仲間だったのですね。

◎そのようなフランシスコは、何よりも「平和」を大事にしました。平和のためならどこにも出かけて行きました。ある時には、キリスト教徒とイスラム教徒が激しく闘っていたエジプトに行って、王様に平和を訴えました。「王様、戦争は罪です。武器を捨てて平和に暮らしましょう」と。「何を言う。戦いによる勝利だけは平和を作るのだ」という王様にフランシスコは祈りを捧げました。そのようにフランシスコは平和のために働きました。

◎今日、私達はフランシスコの生き方を学びました。今、世界には争いや憎しみ、戦いがあります。でも、争いは命を奪い、自然を破壊します。平和とは人と人、国と国が仲良くするだけでなく、自然とも仲良く共存することです。平和を作りだしてくださったイエス様の愛と平和を受けて、平和のために祈り、働いていきましょう。