2017年7月30日 主日礼拝説教
説教『悪霊の追放と神の憐れみの支配』(マルコ5:1 ~20 )
◎7月最後の主の日を迎えました。先週も多くのニュースがありましたが、昨年起こった7月26日の「津久井やまゆり園」の事件から1年が経ったことが報じられていました。重い障がいを抱えた19人が犠牲となった痛ましい事件でした。私達は改めて命には優劣はないこと、命の重さにおいて皆、平等であること、弱い人と共に互いに助け合い・支え合い・担い合っていかなければならないことを伝えて参りましょう。
◎さて、今日も聖書のみ言葉から新たな命を受けて参ります。今日取り上げるのは、マルコ5:1~20です。前回は、突風を静めるイエス様の奇跡物語を取り上げましたが、今日の話は、その舟が向こう岸に着いて、悪霊に取りつかれていた人の悪霊を主が追い出し、人間性を取り戻し、再生された奇跡が語られています。今日は、ここに込められたメッセージを聞いて参りたいと思います。その前に内容を見ていきましょう。
◎今日の物語は3つの場面からなっています。第1の場面、5:1~5では悪霊に取りつかれた人が登場します。着いた向こう岸とはガリラヤ湖の南東にあるゲラサ人の地方です。この地方はデカポリス地方といいますが、話の舞台になっているのは湖岸の地方です。そこには豚を飼っている人達がいたとありますから、ユダヤ人以外の外国人だと分かります。岸に着いたイエス様の所に一人の悪霊に取りつかれた人がやってきます。その人は墓場を住まいとし、鎖を引きちぎり、足枷を砕き、昼も夜も山や墓場で叫び、石で自分を打ち叩いていたと言いますから、誰も抑えられない大きな力に支配され、死と滅びに支配され、この世に憎しみを抱き、自己否定と自己憎悪を抱き、否定と絶望の中に生きていました。神に背く悪霊に支配された人の姿があります。命・肯定・創造・再生・希望の対極にある死・否定・破滅・絶望の中にいたのです。
◎第二の場面は悪霊追放の場面です。悪霊に取りつかれた人は主の元に走り寄って平伏し「いと高き神の子イエス、かまわないでくれ、苦しめないでほしい」と叫びます。悪霊はイエス様を神の子と見抜き、神の子には勝てないと思い、助けてほしいと懇願します。「名は何という」と問われると「レギオンです」と答えます。レギオンとは古代ローマの軍隊の軍団を意味します。6000人から成る大軍団です。それほど多数の悪霊が取り付いていたのです。悪霊は豚の中に入らせてほしいと願い、主がそれを許すと悪霊は豚の中に入り、2000頭の豚が崖を下り、湖になだれ込み、溺れて死にます。そのようにして悪霊はイエス様の権威と力によって追放されて全滅し、イエス様が悪霊に完全に勝利されたことをこの場面は伝えています。
◎第三の場面はこの出来事の後の話です。それを見た豚飼い達は驚いて逃げ出し、そのことを町や村に伝えました。すると人々がやってきて、悪霊に取りつかれていた男が服を着て正気なって落ち着いていた姿を見て恐ろしくなります。人々はイエス様にこの地方から出て行ってほしいと願い、主もそれを聞いて舟を出し、引き返します。正気になった男は、主の御後に従いたいと願い出ますが、主は「家に帰りなさい。身内の人に起こったことを知らせなさい」と言って家に帰します。その男は、イエス様は自分にしてくださったことを人々に伝え、その地方・デカポリス地方全体にイエス様のことが広く知らせられたのでした。
◎そのような話ですが、ここにはどのようなメッセージが込められているのでしょうか。今日は3つのメッセージをお伝えします。第一のメッセージは、常にイエス様が私達の先頭に立って世の一人一人を救い出しておられると言うことです。主は「向こう岸へ渡ろう」と言われ、悪霊に取りつかれて苦しんでいる人の救済に向かわれ、その救済が終わると戻られました。まるで99匹を残して迷える一匹の羊をどこまでも探しにいく羊飼いのように主は私達の先頭に立って救いへと向かわれる。そのようにして私達も主に救い出された者です。であれば今度は私達が迷える人の救いのために向かわなければなりません。農伝の先輩に沖縄の兼次伝道所に仕えた村上仁賢牧師がおられます。一人の救いのために私達も召されているのです。
◎第二のメッセージは、主は悪霊を追い出し、悪霊を滅ぼす勝利者であるということです。今日の記事にあるように悪霊は人間を支配下におきます。その力は圧倒的で自己と他者、世界を憎み、否定し、絶望へと追いやり、滅ぼそうとします。多くの現代人も悪霊の元で苦しみ、自己否定、他者否定、世界の否定へと導かれ、他者への攻撃・否定・暴力へと向かわせています。しかし、イエス様の前に、悪霊は脅え、主が命じると悪霊は追い出され、滅びていきます。主は、悪霊と悪霊に取りつかれた人を分け、悪霊を追放して、その人の本来の自分を取り戻し、再生させてくれます。主こそ勝利者であることを伝えているのです。
◎第三のメッセージは、悪霊を追い出された人が主のことを宣教したと言うことです。救われた人は、主の御後に従いたいと申し出ます。しかし、主は「家に帰りなさい」と命じ、家族伝道こそあなたの使命だと言われます。その後、その人はその地方全体に主を宣べ伝えました。救われた者には使命があるのです。