説教『一粒の麦の豊かな恵み』(ヨハネ12:24)  

2017年11月12日         子ども祝福・全体礼拝・説教要約

説教『一粒の麦の豊かな恵み』(ヨハネ12:24)

◎11月2回目の日曜日・主の日を迎えました。今日は、子どもたちを祝福する「子ども祝福式」が持たれます。子どもたちの一人一人とそのご家族の上に神様の祝福が豊かにあるように一緒に祈りたいと思います。

◎さて、今日の礼拝で取り上げる聖書の言葉は、先ほど読んでいただきましたが、ヨハネによる福音書の12章24節の「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。しかし、死ねば、多くの実を結ぶ」という言葉です。皆さんは麦の粒を見たことがありますか。大きさは米粒ほどで、色は薄い茶色です。麦の中でも小麦は多くの場合、そのまま食べるというより、パンにして食べることが多いと思います。

◎その麦をどうやって育てるのかというと、まず、この粒というか種を土に埋めます。だいたい11月から12月にかけて畑の土に麦の粒、2~3粒を10センチ間隔で土の中に埋めて土をかぶせます。そうすると、2~3日後に粒の皮を破って白い芽と根が出てきます。そして、10~15日で地面に青い芽が出てきます。

寒い冬には麦踏をして根付かせます。3月頃になると青い茎は膝くらいまで大きくなります。やがて小さな穂が出て、花が咲き、実をつけます。そして、6月頃になると茎も穂も茶色に変色し、収穫をします。

◎一粒の麦を土にまくと、一粒から20~40粒の麦が収穫できるそうです。普通、麦は袋の中に入れて保存します。袋の中の麦は一粒のままですが、その麦を袋から出して、土にまくとたくさんの実を結ぶのです。

イエス様は「一粒の麦は、地に落ちて死ななければそのままである。しかし、死ねば多くの実を結ぶ」とおっしゃいました。イエス様は麦を土にまくこと、埋めることを「死ぬ」とおっしゃったのですね。一粒の麦は袋の中に入れたままだと一粒のままですが、土にまいて埋めればたくさんの実を結びます。そのことをイエス様はおっしゃったのですね。しかし、なぜイエス様はこんなたとえ話をなさったのでしょうか。

それは、イエス様ご自身のことを教えるためでした。これからイエス様は十字架にお架かりにかかって、死んでいかれます。しかし、死ぬことによって私達に永遠の命を与えてくださる。イエス様の死によって、私たちは永遠の命という実を結ぶのです。イエス様は「私が死んでも、私はあなたたちの命となって実を結ぶのだ。私の死は無駄になるのではなく、多くの実を結ぶのだ」、そう私達におっしゃっているのです。

◎私は、このイエス様の言葉を聞く時、一つの話を思い出します。それは「しあわせな(幸福な)王子」として知られている物語です。どんな話か、絵本を使ってお話してみましょう。ある町の広場に、立派で美しい王子の像が立っていました。その像は金でおおわれ、王子の目には青いサファイヤが、剣のさやには赤いルビーがはめ込まれていました。町の人たちはそれを見て、何て美しいのだろうとほめたたえたのでした。ある日の夕方、一羽のツバメがその像の足元にとまりました。南に行く途中、仲間にはぐれ、一人ぼっちになってしまったのでした。ツバメが休もうとしたところ、冷たい水のしずくが落ちてきました。

◎何だろうと上を見上げると王子が泣いていました。そのしずくは王子の涙だったのです。王子は言いました。「私が生きていた時には涙を流すことはなかったが、今の私にはこの町で苦しむ人たちの悩みが良く見えるので涙を流さないではいられないのだ」と。そして、「向こうの貧しい家で病気の男の子が苦しんでいる。お母さんは働いているけれど薬が買えないんだ。ツバメさん、私の剣からルビーを抜いて届けてくれないか」とツバメに頼みました。ツバメはそのルビーをその家に届けました。ツバメは優しい暖かい気持ちになりました。次の日、王子はツバメに貧しい若者に自分の目となっている青いサファイヤを届けるように頼みました。サファイヤが届けられた若者は「誰かが僕を励ましてくれている!」と喜びました。

◎次の日、今度はマッチ売りの少女にもう一つの目にはめ込まれているサファイヤを届けるように、王子はツバメに頼みました。王子の目は見えなくなりました。ツバメは決心します。目の見えなくなった王子のそばにいようと。ツバメは町の中で貧しさのために苦しんでいる人達のことを王子に伝えます。王子は、自分の体をおおっている金をはがして貧しい人達に届けるように頼みます。ツバメは、王子の言う通り、王子の体から金をはがして届けました。王子の体はだんだん、みすぼらしくなっていきました。やがて、雪の降る日、ツバメは死んでしまいました。すると、王子の体の中にあった鉛の心臓が二つに割れてしまいました。町の人達は見すぼらしくなった王子の像を取り壊しました。その晩のこと、神様は天使をその町に遣わし、その町で最も美しいものを持ってくるように言います。天使は持って来たのは、死んだツバメと王子の鉛の心臓でした。神様は、このツバメと王子に永遠の命を与え、二人をほめたたえたのでした。

◎こういう話です。この王子はイエス様と重なります。イエス様も私達に御自分の大切な命を与えてくださったからです。私達はイエス様のことを心に留めると共に、苦しむ人のために生きて行きたいと思います。